蜂の子とイナゴの違い

食用の昆虫として、真っ先に「イナゴ」を思い浮かべる人は多いはずです。特にイナゴの佃煮は有名ですね。同じ昆虫を使った食べ物でも、イナゴと蜂の子では違いがあります。具体的にその違いを見てみましょう。

イナゴとは

イナゴは直翅(ちょくし)目バッタ科に属する昆虫です。稲の害虫としても良く知られている日本でもっともポピュラーなバッタと言えます。
戦後、殺虫効果の強い農薬が使われ個体数が激減しましたが、昭和50年代に低毒性の農薬に切り替えられ、その数は増えています。

蜂の子とは

蜂の子は、スズメバチ、クロスズメバチ、ミツバチ、アシナガバチなどの幼虫やサナギです。昔から貴重なタンパク源として全国で食べられていました。特にクロスズメバチは食用として岐阜県や長野県の山間地域では郷土料理として親しまれています。

蜂の子とイナゴの違いは?

蜂の子もイナゴも昔から食用として食べられていました。特にイナゴは、日本では平安時代から食用としていたそうです。蜂の子の歴史も古く、中国最古の薬物学書には蜂の子の薬効が記述されています。
では、食用としての蜂の子とイナゴには、どのような違いがあるのでしょうか?

食べ方の違い

蜂の子とイナゴの食べ方には少し違いがあります。

イナゴの食べ方

イナゴの食べ方で一般的なのが「イナゴの佃煮」です。かつては一般家庭でも水田からイナゴを集めて調理していましたが、今では調理する主婦はほとんど見かけません。市販されている商品を購入しているケースが一般的で、食用昆虫の中で最大の消費量を誇っています。
甘露煮や佃煮がイナゴのメインの食べ方ですが、炒ったイナゴをすり潰した粉末を調味料として味噌汁に入れたり、味噌に混ぜて「いなご味噌」にして食べる方法もあるようです。

蜂の子の食べ方

蜂の子は、岐阜や長野、愛知、静岡、岡山、宮崎県などの山間地で主に食べられていました。炊き込みご飯や五平餅、甘露煮や佃煮、さらに宮崎県の奥日向地方ではオオスズメバチの幼虫を使ったそうめん(はち汁)が貴重な郷土料理になっています。

成分の違い

蜂の子もイナゴも、昔から貴重なタンパク源として食べられていましたが、具体的にどうのような栄養が含まれているのでしょうか?

イナゴの成分

イナゴの主な成分では、タンパク質がもっとも多く、炭水化物、脂質の順になっています。また、ナトリウム、リン、鉄、亜鉛、マンガンなどのミネラルやビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB 群、ナイアシン、パントテン酸、葉酸などのビタミン類も含まれています。

蜂の子の成分

蜂の子の主な栄養成分としては、タンパク質、炭水化物、脂質、繊維質があげられます。さらに、ビタミンC、ビタミンB群、コリン、ミネラル、アミノ酸、脂肪酸などが含まれています。特にアミノ酸がバランス良く含まれているのが特徴です。

効能の違い

イナゴや蜂の子には、さまざまな効能が言われています。

イナゴの効能

イナゴは、漢方では「蚱もう(さくもう)」と呼ばれ、咳止めやひきつけに効果があると言われています。また、小児の疳(かん)の虫の治療にも使われるそうです。疳(かん)の虫は、子供が興奮して夜泣きやかんしゃくをおこす症状の俗称です。

薬用の昆虫を紹介した書籍では、イナゴには咳止めの他に解熱や貧血など効果があり、イナゴの黒焼きを粉末にしたものを酢に溶かして塗るとリンパ腺の腫れに効果があると記述されています。

蜂の子の効能

最近、蜂の子の効能として注目されているのが「難聴」や「耳鳴り」の改善です。岐阜大学医学部付属病院の研究チームの調査では、蜂の子に聴力を改善させる効果があることが報告されています。

一般的な効能としては、肌の老化や免疫力のアップ、体力の回復や滋養強壮などがあげられます。

世界で注目される昆虫食

FAO(国際連合食料農業機関)が食料危機の解決策として昆虫食を取り上げて以来、昆虫食に注目が浴びています。タンパク源としてだけでなく栄養源としても期待される昆虫食。蜂の子やイナゴは、日本を代表する昆虫食です。その特徴を比較して、健康づくりにお役立て下さい。

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